「妄想力」を高め、論理的に伝えるブログ

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「町の未来をこの手でつくる」猪谷千香

街づくりの仕事をしているSさんに貸してもらった本。私も地元を今以上に楽しい場所にしたい想いがある。岩手県紫波町は食料自給率170%の農業が盛んな人口34,000人の町。紫波町の駅前で2009年に始まった「紫波町オガールプロジェクト」についてのお話。

 

紫波町オガールプロジェクトとは

紫波中央駅前にある東京ドーム2個分の町有地を役所と民間が連携し開発。補助金に頼らない町「オガールプラザ」が誕生した。土地を縦断する芝生広場では人々が気軽にイベントやバーベキューなど利用できる。その両脇に、産直マルシェなどが入った商業施設、役場、図書館、バレーボール専用体育館、エネルギーステーションやオガールタウンと言われる住宅エリアが配置されている。年間80万人が訪れる注目の地域。

 

脱これまでのまちづくり戦略「公民連携室」

このプロジェクトを企画・運営する「オガールプラザ株式会社」代表取締役の岡崎正信さんは地元建設会社に勤めていた。紫波町長の藤原孝さんは民間企業の岡崎さんと町役場の鎌田千市さんをメンバーとした「公民連携室」を2008年1月に立ち上げる。2人はこの頃共に東洋大学大学院へ入学し公民連携を専攻し、アメリカやヨーロッパで実施されているPPP(Public Private Partnership)を週末に東京まで通って学んでいた。PPPとは公共サービスや地域活性などの事業を、官と民が共同で進めて行く手法。公共事業の計画段階から民間企業が深く関わる為、民間企業のスピード感と競争力を用いる事ができる。

 

 

町有地再開発プラン

当初町の計画では、町有地を民間企業に貸し、代金を前払いしてもらう。この代金を町役場など施設整備費用にあてる。不足分は町が資金を借り入れ、開発で得る固定資産税で支払いをする。財政負担を最小限に、公共施設と民間施設による複合的な経済開発が目的だ。

 

東洋大学教授の清水さんがまちづくりの手法としている「現代版家守」を岡崎さんは盛岡で実施。「家守」とは江戸時代に管理さていない建物やお店やさんの相談に乗ったりし、町の維持管理を民間人である。

 

プロジェクト全体を見渡すコンセプトが大切。この場所で何の為に何をするのかというコンセプトづくりから始めた。東洋大学教授の清水さんが呼んだ、建築家で都市デザーナーの松永安光さんからの提案は、アメリカの「マイズナーパーク」「サンタナロウ」という再開発の成功事例。中央に長い緑地がありその両側に商業施設などの建物や住居があるというもの。その町までは車でいくが、町は歩いて楽しむという「アーバン・ビレッジ」「ニュー・アーバニズム」なるコンパクトシティ。中央の緑地が眺めを良くして賑わいをつくり付加価値を高めてくれる。

 

コンセプトを住民に伝える為に100回以上の説明会や、住民と緑地の使い方などのワークショップを繰り返し、丁寧に住民の声を聞いていった。住民たちが何かしたいと思った時、用事が無くてものんびりしたい時、オガール広場ににチェックインすれば、誰かと繋がって自己実現できるような場にすることに。実際にオガール広場の利用は年間155回で、その内120回がバーベキュー。結婚式が行われる事も。

 

資金調達で「愛の千本ノック」を受けて堅実な事業計画を

建設費用11億円を岡崎さんがどうやって捻出したのか。建物完成後に公共施設部分を8億4,000万円で町に売却。残りを銀行などに借入をするのだが、「愛の千本ノック」と呼ばれる条件「10年以内に経営を累積黒字にする事」を示す必要があった。鉄筋から木造へ変更するなど建築費用のコストダウンをした。質の高いテナントを確保するため、テナントの事業計画を細かくチェック。入居希望のテナントを断る場面もあった。民間が運営する部分には補助金が入っていないので身の丈に合った計画となった。

 

「オガール」らしさをデザインする

オガールらしさを計画する「デザイン会議」には外部から専門家を呼んだ。建物・フェンス・サイン・消火栓など景観を構成するあらゆるものをルール化した「デザインガイドライン」を作成。例えば推奨される色彩として、辛子色・松葉色・海老茶色など町の風景や自然になじむ日本古来の色が選ばれている。

 

循環型まちづくり

エネルギーステーションでは、地元の木材から作った木質チップをバイオマス燃料にしてお湯を沸かしている。そのお湯を地中のパイプラインで町有地の施設や住宅へ供給し給湯や暖房や冷房に用いている。住宅はエコハウスを推奨していて、構造材に地元の木材を80%以上使用し、気密性が高くエネルギー効率の良い家を地元の建設会社で施工している。こうやって地域で物事が循環し、100年後の子ども達の環境保全を目指している。

 

プロジェクトの中枢を担う図書館

新設された図書館では年間20万人が利用している。通常の図書館は教育委員会の管轄だが、オガールでは公民連携室が管轄をしている。その為、図書館としては珍しい試みをしている。ビジネス支援として農家のバックアップ。「こんびるカフェ」は異なる立場の人が気軽に話し合い、「夜のとしょかん」では閉館後に飲み物を持ち込みトークイベントを行う事で、全国の図書館の中でも高い評価を得ている。

 

今日の妄想

私の住む地域も人口減少があり「地方創生」が課題となっている。このオガールプロジェクトの様に、地域の公と民の人が本気になること。補助金に頼らない身の丈にあった計画を立てて実行する事が必要なんですね。私も地元で新しい市場を作ってビジネスをしていきたいと思っています。