「ローカルメディアのつくりかた」影山裕樹(2016年6月1日発行)
数ヶ月前、静岡市で「ふじのくに文化情報フォーラム」という、地域の課題を持つ人と対話するという会が行われました。ゲスト影山さんのお話がきっかけで買った本。
著者影山さんと3つの論点
影山さんは雑誌「STUDIO VOICE」編集部を経て、「野外フェスの作り方」などカルチャー書を多数手がけ独立。「地域を変えるソフトパワー」の発行、各地方の芸術祭やアートプロジェクトに携わっている。
東京で編集をしている影山さんが、地域の人と人がつながる為の「ローカルメディア」を、全国の作り手たちに会って取材をしてきた。その「ローカルメディア」を「観察力×コミュニケーション力」「本・雑誌の新しいかたち×届けかた」「地域の人×よそ者」の三つの論点に分け紹介している。
実際に人気のあるローカルメディアをいくつも紹介
お年寄りが表現し語り合う場所「みやぎシルバーネット」、生産者と消費者の関係を深める食べ物付き情報誌「東北食べる通信」、平凡な場所が素敵に見えてくる「雲のうえ」など10種以上の「ローカルメディア」が紹介されている。
そのメディアをどういう人が、どういう目的や思いで、どうやって読者に届け関わりを持ち、地域に影響を与えているかなど詳細を知ることができる。
地方で編集力を使って稼げるようになった
バブル当時の東京では、コピーライターが都市生活者の日常をブランド化して、優れた物が東京に集まっているというフィクションを生み出した。「あなたが住む町より、東京の方がいい」というメッセージを雑誌を用いて伝えていた。
震災以降、地方移住や地方再発見ブームにより、地方のコンテンツへのニーズが高まっている。東京の出版社が取材した情報より、地元の人がもつ一次情報を発信している「ローカルメディア」が面白いのだ。ネームバリューより自分だけが知っているとっておきのネタが付加価値の高いコンテンツであり、地方から都市へ価値のある情報を届ける時代がやってきたのである。
ローカルメディアの本当の価値は「寄り合い」
ローカルメディアは出来上がった物より、つくるプロセスに魅力が詰まっている。プロセスでは読者のコミュニケーションを促進する。それは、昔の日本人が面倒で答えが出るかわからない課題について話し合う「寄り合い」に近い。単に地元の情報を発信するだけでなく、読者を巻き込み町を編集する場(プラットフォーム)としての役割を担うようになっている。
大切なのは自分たちが住む地域が、豊かで楽しみに満ちたフィールドだと自覚する事。その地域ならではのストーリーを、その地域に住む人たちで活発に交換する。都心で起こるようなドラマチックな出来事でなくても良いのだ。
今日の妄想
私は静岡市という地方への移住して17年が経ちます。若い頃は都心に憧れてましたが、子どもを育てるとなると地方である静岡市がとても魅力的。今では3人の子どもを育てています。そんな静岡市をもっと楽しく暮らせる場所にする為に活動をしています。
ひとつは、マラソンの集いを5年間続けていて、スポーツを通じて仲間づくりをする事を伝えるメディア。もうひとつは、地元で商業出版した著者のトークイベントを、地元の書店で実施しています。書店という場所が本を買うことに加え、知的好奇心を刺激してくれる人と関係性をもてるメディアになるように願っています。
ローカルメディアのつくりかた 人と地域をつなぐ編集・デザイン・流通 [ 影山裕樹 ]
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